2017年12月16日土曜日

今治藩ゆかりの史跡①~今治藩主の墓~

皆さん、こんにちは。

当ブログでは、これまで今治城の日々の出来事や今治城で行われたイベント等を中心に紹介していましたが、今回より今治藩にゆかりのある史跡の紹介も併せてしていきたいと思います。
地元の方や、旅行で今治に訪れて頂いた方に今治城以外の史跡にも興味を持って頂くきっかけになれば幸いです。

さて、ここから本題に移りますが、記念すべき第1回目は昨年秋の今治城特別展「今治藩主 久松松平氏の世界」でも取り上げました久松松平家の墓を紹介したいと思います。


県道38号線沿いに入口があります。

江戸時代、久松松平家は国元である今治と江戸の2ヶ所に墓を設けておりまして、今治では今回紹介する今治市古国分及び城下町にあった松源院に、江戸では以前当ブログでも紹介しました東京都江東区の霊厳寺にそれぞれ歴代藩主とその家族が葬られていました。

このうち歴代藩主で今治に墓があるのは、松平定房(初代)・松平定陳(3代)・松平定基(4代)の3人ですが、残りの2代及び5代~9代までの6人の藩主は江戸の霊厳寺に墓があります。
(10代定法のみ東京・谷中墓地)

今回は今治市古国分に残る定房・定陳・定基の3人の藩主の墓を紹介したいと思います。


県道38号線沿いの入口から趣のある石段が続きます。


石段を登った先には3人の藩主の墓が並んでいます

3人の藩主の墓は中世に国分山城が築かれた国分山の北東側にある小高い丘の上にあります。
上の写真で見ますと、左から定陳(3代)・定房(初代)・定基(4代)の順に並んでいます。

       
初代藩主・松平定房の墓


初代藩主・松平定房は、徳川家康の甥に当たる人物で江戸城大留守居役を任される等、江戸幕府からの信頼が厚い人物でした。藩主を退いた後は、この古国分地区に桐ノ木書院という屋敷を構え、悠々自適の隠居生活を送ったそうです。

       
3代藩主・松平定陳の墓
定房の墓から見て左側にあるのが、孫で3代藩主・松平定陳の墓です。

定陳は、在任中に新田開発や殖産興業を行って藩の立て直しを図る一方で、江嶋為信や岡部直明といった新参の家臣を家老に抜擢する等、人事面でも改革を推し進めました。

元禄11(1698)年、備後国(広島県)福山藩主の水野家が改易になった際には、福山城の接収を幕府から命じられる等の大役も果たしています。


4代藩主・松平定基の墓

最後に定房の墓から見て右側にあるのが、定陳の息子で4代藩主・松平定基の墓です。

定基の時代は蒼社川が何度も洪水を起こしたり、干ばつや城下町が火災で焼失する等、自然災害に何度も見舞われたため、藩の財政が逼迫していく事になります。
定基は家臣に対して支給する禄(給料)の削減といった緊縮政策を行いますが、藩の財政が好転する事はありませんでした。

以上、3人の藩主の墓とそれぞれの簡単な事跡を紹介しましたが、いずれの墓も宝篋印塔という形式で高さが3.6メートルという大名家の墓にふさわしい威容を備えているのが特徴的です。


定房の墓から海側を望む。樹木の向こう側は唐子浜です。

これら3基の墓は、いずれも海側(唐子浜)を向いて立っています。現在では、上の写真のように樹木に覆われていますが、かつてはここから穏やかな瀬戸内の景色を望む事が出来たのではないでしょうか。
墓を構えるには最高の立地といえます。

さて、上の写真には石灯篭がたくさん並んで写っているのが見えると思いますが、誰が奉納したものかわかるでしょうか?

実はこの石灯篭、今治藩の家臣達が奉納したものなんです。
その数なんと67基!
3人の藩主を守るが如くズラッと並んでいる姿は壮観といえるでしょう。
その一部をここで紹介致します。




上の写真に写っているのは、4代藩主・定基の墓の前に並んでいる石灯篭のうちの1つです。定基の時代に加判役(家老)を勤めた鱸重親が奉納したものです。



少し見えにくいですが、「鱸五郎右衛門 平茂親」と刻まれているのがわかります。



同じくこちらも4代藩主・定基の墓の前に並んでいる石灯篭のうちの1つです。今治藩で筆頭家老を勤めた服部正令が奉納したものです。


「服部逸軒 平正令」と刻まれているのがわかります。
なお、服部正令は3代藩主定陳の娘を正室に迎えていますので、定基とは義兄弟の間柄という近い関係になります。

このように古国分にある今治藩主の墓は、藩主と家臣という主従関係が一目でわかる空間になっているのが特徴的と言えるでしょう。
江戸時代初期~中期の大名家の墓所の様子がわかる上でもここは貴重な史跡です。

因みにここは愛媛県史跡にも指定されておりまして、今治市だけでなく愛媛県にとっても貴重な史跡として位置付けられています。

                   今治城 伊津見