2024年3月29日金曜日

噛めば噛むほど味わい深い?!古文書・くずし字アンケート結果

 展示解説会をききにきてくださった方の「古文書を読めたらもっとおもしろいんだろうな・・・」というつぶやきや、


「古文書の入門的なことを教えてほしいのよ」というガイドさん


そんなご要望にこたえて3月4日から、企画展「くずし字を読みたい!ー江戸時代の村と古文書ー」を今治城の山里櫓で開催しています。






本展は、ヒントを手がかりに江戸時代の村の文書を解読するコーナーやくずし字辞典の体験コーナー、ひらがなパズルなど古文書・くずし字の入門の助けになるような展示にしています。


構成は以下のとおり


1江戸時代の村と文書―文字を使う社会へ―

2どんな文書があるの?

3古文書解読に挑戦

4「源氏物語」広まったのは江戸時代―ひらがなパズル―

5もっと読めるようになりたいーくずし字辞典、古文書学習の先輩たちの勉強法ー



担当学芸員お手製の「ひらがなパズル」




くずし字辞典を使ってみようコーナー



5の「古文書学習の先輩たちの勉強法」コーナーは、事前に実施した「くずし字、古文書解読の学習に関するアンケート」(2024年1月29日~2月12日にGoogleフォームでで実施。)をもとにしています。


アンケートでは35人の「先輩たち(アンケートの対象:くずし字が読める方)」から、ためになるものやクスッと笑ってしまうものまで様々な回答が寄せられました。


ここではその一部をご紹介します。




Q どのくらいの期間でくずし字が読めると感じるようになりましたか?




アンケートの対象者とした「くずし字が読める方」もそうですが、この質問は「読める」とはどのような状態かをあえて具体的に指定しませんでした。


その結果、この他の質問で回答してもらった「くずし字の解読歴」と照らし合わせると、7年以上のベテラン勢20人が「読めるようになったと感じた」のは、5年以上と回答した人が最多の6人となりました。(5年以上・・・6名、4年以上5年未満・・・3名、3年以上4年未満・・・5名、2年以上3年未満・・・2名、1年以上2年未満・・・3名、1年未満・・・1名)


全体の回答で最多だったのは1年以上2年未満の37%ですから、どうやらくずし字解読歴がながくなるほど「読める」と感じるまでの年数が伸びる傾向にあるようです。


最初の数年の「読める」段階から、さらに年数を重ねた「読める」へ。


古文書・くずし字は奥が深いようです。



このことを補足できそうな回答が以下の質問でみられました。



Q くずし字がよめるようになって良かったことがあればお教えください。

Q これからくずし字を勉強する人へメッセージをお願いします。


この回答では、くずし字を読み始めて数年の方はくずし字を読めてうれしい!という、これまでよくわからなかった文字の形が分かるようになり、文字そのものが読めてうれしい、といった気持ちを共有していただきました。


そして、くずし字解読歴が長くなっていくと、


手紙や日記を読んで「過去を生きた人と直接つながれるような感覚」


「その内容を理解して、当時の人たちの気持ちがわかったような気持ち」


「先人の生き方や思いに触れて、自分自身を見直すことが、よくあります。」


といった古文書の内容を味わう楽しさを教えていただきました。


長年かけて噛めば噛むほど味がでてくる古文書……


古文書入門者の方やこれから勉強を始める方は、ぜひこの様々な楽しさとの出会いを楽しみに学習していってください。



アンケートでは、おすすめの勉強法などについても質問しました。


以下は展示室に掲示しているパネルです。


くずし字学習の先輩たちのメッセージをぜひご覧ください。











 












企画展は5月19日まで開催中です。


会期中にぜひご来館ください。


学芸員M





2024年3月15日金曜日

古文書を保存する、修復する、活用するーにじの会研修会ー

 3月13日、14日に今治市の学芸員の勉強会「にじの会」🌈が開催されました。






毎年恒例の研修会。


今年度は、紙資料(古文書など)の保存や修復がご専門の元興寺文化財研究所の金山正子先生にお越しいただきました。



1日目は、まず座学で紙資料の修復に関する基本的な考え方や事例を学び、



後半部分では各館の収蔵庫にあわせた環境管理の仕方について先生の意見をうかがったり、今治城と村上海賊ミュージアムの収蔵資料を実際に先生にみてもらいどのような修復ができるか、今後どのような環境で保管しておくべきかといったことを教えていただきしました。



「修復できるでしょうか…?」



経年劣化により継目が外れた古文書





2日目は実習。


練習用に穴をあけた和紙で「手繕い」の練習をしました。


虫害などにより古文書あいた穴を修復する際に使われる技法です。



和紙を穴の形にあわせてちぎったもの(ちぎるのが慣れるまでは難しい!)に小麦澱粉糊をぬり、






穴に貼り付けていきます。






また「投げ裏打ち」という修復技法も体験。






(「投げ裏打ち」の体験の様子は、今治城公式Xに動画あげています。3月14日のポスト)




そして最後に「紙縒り(こより)」づくり。


紙縒りは、細く切った和紙をひねってひも状にしたもの。


冊子体の古文書のとじ紐としてよく使われます。







うまくできた?



つくった紙縒りはこのように帳面の綴り紐になります。








完成!




紙資料の保存や修復について多くの知識と気付きを得た研修会でした。


今後の各館収蔵品の保存・活用にしっかりと役立てていきます!


学芸員M


関連記事(前年度のにじの会研修会は刀剣)⇒ 今治城 スタッフブログ: 甲冑がよりかっこよく!

2024年1月31日水曜日

「城カード今治城」を販売しています

 2024年1月1日に「日本100名城 城カード 今治城」の販売を開始しました。




「日本100名城城カード」は、公益財団法人 日本城郭協会が発行しているお城のカードで、表面に城の写真、裏面には城の基本データが掲載されています。


これまでに、


2018年 第1弾 現存天守12城


2020年 第2弾 現存三重櫓5城


2021年 第3弾 再建天守7城


2022年 第4弾 5城


2023年5月 第5弾 8城


2023年10月 第6弾 9城


が発売されてきました。


そして、2024年に第7弾として9城が発売。そのうちの1つが今治城です。


価格は350円(税込み)で今治城天守1階観覧券売り場で販売しています。


登城の記念にぜひお求めくただい。




2023年12月30日土曜日

年末・新年の今治城情報

今年もたくさんご来城いただきありがとうございました。



年末は12月29日から30日が「休館

新年は1月1日から「通常通り開館」です。

2024年もどうぞよろしくお願いいたします。


さて、年末から新年にかけての今治城イベント情報を3つお届けします。



1つめ 今治城オールナイトライトアップ

通常は毎日日没30分後から22時までのライトアップですが、

12月31日の夜から1月4日の朝にかけては「オールナイト」になり、

日没30分後から翌朝6時までライトアップしています。

深夜の今治城もぜひお楽しみください。




2つめ 御祝印(限定御城印)の販売

2024年元旦から「御祝印」の販売をいたします。

今治城吹揚公園の藤堂高虎像が建立されて20周年。

これを記念した「御祝印」です。





ぷっくりと浮き上がる「藤堂蔦」がポイント。






また、「日本三大水城 今治城」の印はスタッフが1枚1枚心を込めて押しました。


限定2000枚、500円(税込み)での販売です。

お一人さま5枚まで。通信販売はありませんので、悪しからずご了承ください。



3つめ 入館でプレゼント 高虎バリィさんしおり2024年お正月バージョン

元旦から、今治城観覧券をご購入の方先着2000名様に「高虎バリィさんしおり2024年お正月バージョン」をプレゼントします。

高虎のうさみみカブトをかぶったバリィさんがお正月をお祝いしている図柄です。




例年通りの入館者数であれば三が日分はあるはずですが……数量限定ですので、「必ず欲しい!」という方ははやめのご来城がおすすめです。


吹揚神社で初詣、そのあとは今治城の天守展望台で絶景をご覧ください。


以上、年末から新年にかけての今治城イベント情報でした。




最後に、三が日の「臨時駐車場」情報についてもおしらせいたします。

2024年1月1日から1月3日までの3日間、通常の駐車場の他に、臨時駐車場を設けております。

期間:2024年1月1日(日・祝)~1月3日(火)
   8時30分~17時30分
   ※上記の時間以外は施錠いたします。時間内のご利用をお願いいたします。

場所:今治市立吹揚小学校(今治市黄金町3-3)運動場

詳細は今治城HP「おしらせ」欄をご覧ください




それではみなさま、よいお年をお迎えください。







2023年12月4日月曜日

2023年の紅葉振り返って

こんにちは。


寒い風が吹き、マフラーや手袋をした方がいいかなと思う日が多くなってきました。


寒さが増してきて今治城の紅葉もほぼ終わりました。


本格的な冬が来る前に、今年の紅葉の様子を今治城の紅葉スポット「鉄御門(くろがねごもん)」前の写真で振り返ってみます👇




11月4日 色づき始め(まだ緑の葉も。秋が始まります!)





11月24日 見ごろ(鉄御門の黒・白と紅葉の赤のコントラストが美しい👏)






12月3日 ほぼ散りおわり





約1か月のあいだ紅葉を楽しむことができました🍂


これからの季節は空気も澄んでまた美しい今治城を見ることができます。


冬の今治城もお楽しみに!



🏯特別展情報🏯

今治城山里櫓にて「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末ー」を開催中です。


「動乱の時代」幕末に、時代の波にのまれながら、あるいは立ち向かいながら、時にはしたたかに生きた人びとの生き様を、今治市域ゆかりの歴史資料から紹介した展示です。


会期は12月10日まで。


あと数日となっております。ご来城をお待ちしてます😊


特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末ー」詳細情報


2023年10月30日月曜日

したたかに生きた幕末の庶民ー講演会『庶民が生きた幕末維新』を開催しましたー

 今治城で特別展記念講演会『庶民が生きた幕末維新』を開催しました。



今回の講演会では、愛媛県歴史文化博物館学芸課長の井上淳先生をお招きして、「藤井此蔵が生きた幕末維新 -大三島出稼ぎ大工の情報世界―」と題してご講演いただきました。









井上先生は、幕末維新の時代を農民・出稼ぎ大工・商人として生きた藤井此蔵について、此蔵が書き残した記録「藤井此蔵一生記」を題材にお話しされ、



此蔵は越智郡井ノ口村(今治市上浦町)出身で、他所へ赴いて仕事をする出稼ぎ労働者が多くいた瀬戸内海島嶼部において、此蔵も出稼ぎ大工として備中国木之子村(岡山県井原村)で八幡宮本社再建で棟梁をつとめたこと、



商人として穀物売買などを行っており、商売を始めた天保期以降、多くの情報を積極的に収集し、大塩平八郎の乱・黒船来航・安政の南海地震の情報を瓦版・同郷の大坂への出稼ぎ者・写しが流布していた老中側近の書簡など様々なルートから手に入れていたことなどを紹介されました。



幕末維新期を強くしたたかに生きた庶民の姿のお話が大変興味深く、講演会に参加いただいたみなさまからも「幕末のイメージが変わった」「此蔵さんの記録は詳細で、幕末の様子を想像しやすかった」「此蔵の日記を読んでみたくなった」などの感想をいただきました。



参加いただきました皆様、ご講演いただきました井上淳先生、ありがとうございました。



講演会に参加して「もっと知りたい!」と思った方、参加はしてないけれど此蔵さんや幕末と庶民について「おもしろそう!」と思った方、


藤井此蔵の記録「藤井此蔵一生記」は、


宮本常一・谷川健一・原口虎雄編『日本庶民生活資料集成 第2巻』(三一書房1969年)で活字化されています。



史料を読むのは難しそう・・・という方には、「藤井此蔵一生記」やそのほかの庶民の記録類をもとに書かれた著作として、


佐藤誠朗『幕末維新の民衆世界』(岩波書店1994年)もおすすめです。






なお、今治城 特別展図録「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」では、井上先生にご寄稿いただいたコラム「藤井此蔵が生きた幕末維新ー大三島出稼ぎ大工の情報世界ー」を掲載しています。


図録は今治城天守1階および特別展会場(山里櫓)で販売しています。


こちらもあわせてお楽しみください。



学芸員M


【おしらせ】

特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」

会期 ~12月10日(日)

会場 今治城山里櫓


学芸員によるギャラリートーク(展示解説会)

11月23日(木・祝) 14:00~

申し込み不要・観覧券が必要


詳細は今治城HPへ

特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」

2023年10月19日木曜日

幕末!ー特別展がはじまりましたー

 秋らしい気候になり、城めぐりにはよい季節になりました。


今治城へは平日でも約300人の方が来館されています。


秋晴れの今治城





さて、今治城山里櫓では特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」がはじまりました。(会期:2023年10月7日から12月10日)








今回の特別展のキーワードは、「幕末」「民衆・庶民」です。




みなさんは「幕末」というと何をイメージするでしょうか。




坂本龍馬や西郷隆盛、新選組、高杉晋作といったヒーロー


あるいは、ペリー来航、禁門の変、大政奉還、戊辰戦争などといった事件


そういったことをイメージする人が多いのではないでしょうか。







ドラマや漫画、ゲームといったエンタメでも取り上げられるこのようなヒーローや大事件のエピソードは、幕末好きにとっては血の騒ぐものばかりです。



かくいう本特別展担当の学芸員も、幕末好き。



担当学芸員の幕末入門は、中学生のころに夢中でプレイした新選組が活躍するゲームです。



高校生のころにはオープンキャンパス(大学の見学)にかこつけて、新選組関係の史跡をめぐりました。



高校生当時に撮った京都の西本願寺太鼓楼(新選組屯所跡)の写真




しかし、実は「幕末」という時代を経験したのは、こういった華々しい活躍をしたヒーローたちだけではありませんでした。



また、ペリー来航や戊辰戦争などの大事件もヒーローたちだけに関係するものではありませんでした。




ここで出てくるのが、2つ目のキーワード「民衆・庶民」です。




ヒーローたちが活躍したのと同じ時代、彼ら、民衆・庶民はどのように幕末を生きぬいたのでしょうか?



幕末好きでも、あんまりよく知らないな…という方が多いのではないでしょうか。


そこで今回は、民衆・庶民視点を取り入れて今治市域ゆかりの歴史資料を展示しました。


たとえば、幕長戦争(長州征伐)で船のこぎ手として動員された人びと、外国船の来航に対応して海岸防備のために集められた人びと、などなど



幕末の事件や政治の動きと関連させながら紹介しています。




新たな幕末史を発見していただけることと思いますので、ぜひ期間中にご来館ください。




また、今回の特別展では図録を発行しています。


内容の充実はもちろんのこと、表紙・誌面デザインにもこだわって作成しました。







図録は、天守1階グッズ売り場と、特別展会場の山里櫓で700円(税込)販売しています。



ぜひお手に取っていただけますと嬉しいです。



さらに、特別展期間中には、講師として愛媛県歴史文化博物館 学芸課長の井上淳氏をお招きして、記念講演会「庶民が生きた幕末維新」を開催します。


参加は事前申し込みが必要です。


講演会の内容や申し込み方法などの詳細はコチラから↓


特別展関連企画 講演会



さらに、さらに、11月23日(木・祝)14:00~は、展示を担当した学芸員によるギャラリートークを行います。



こちらは申し込み不要です。天守1階で観覧券をご購入のうえ、特別展会場(山里櫓)へお越しください。


特別展詳細↓

特別展「動乱の時代と人びと―今治市域の幕末―」


学芸員M